Business Column
売買契約前の本人確認:法人・代理人案件で止まらない確認順
売買契約直前で本人確認が崩れると、日程調整より前に案件が止まります。法人、代理人、実質的支配者、取引目的の確認を初回から分けて進めることが重要です。
Field Checklist
確認ポイント
- DDや調査で見つかった論点が特約、表明保証、前提条件に反映されているか確認する
- 境界、越境、通行、配管承諾、期限、賃貸借承継を容認事項として整理する
- 決済時に必要な抹消、承諾、引渡書類、精算項目を逆算する
Workflow
本業務の流れ
- 01確認対象者を切り分ける
- 02必要書類を初回で案内する
- 03取引目的と権限を確認する
- 04契約前レビューを入れる
- 05記録を保管して更新する
Guide
手順ごとの進め方
確認対象者を切り分ける
最初に、本人確認が必要なのが個人の買主・売主なのか、法人の代表者なのか、委任を受けた代理人なのかを分けます。法人案件では、担当者と契約当事者が一致しないことが多いため、営業窓口だけを見て進めると後で差し戻しが起きます。誰が契約当事者で、誰が説明を受け、誰が署名・押印するのかを案件メモに固定します。
必要書類を初回で案内する
犯収法対応では、本人確認書類、法人の実在確認書類、取引担当者の本人確認、実質的支配者に関する確認、取引目的の確認が論点になります。契約日が近づいてから依頼すると、登記事項証明書の期限切れや委任状不足で止まりやすいため、初回ヒアリング後に必要書類一覧を送ります。遠隔契約や郵送契約では、原本確認方法と差し戻し条件も先に伝えます。
取引目的と権限を確認する
警察庁の説明でも、宅地建物取引業者は本人特定事項だけでなく取引目的や職業・事業内容の確認が必要です。法人では、担当者が価格交渉できる権限を持つのか、最終承認者は誰か、資金決済の名義は誰かも確認します。代理人案件では、委任状の範囲が売買契約締結まで含むのか、決済・引渡しまで含むのかを曖昧にしないことが重要です。
契約前レビューを入れる
契約書と重説が固まっていても、本人確認と権限確認が抜けていれば締結できません。契約前には、本人確認書類の有効期限、法人登記情報の取得日、委任状、実質的支配者確認、社内承認状況を一覧で見直します。担当者だけで抱えず、契約担当や管理職が見るレビュー欄を設けると差し戻しが減ります。
記録を保管して更新する
確認が終わったら、取得資料そのものだけでなく、確認日、確認者、確認方法、未確認事項を残します。長期案件では、契約延期の間に本人確認書類や登記事項証明書の鮮度が落ちることがあるため、再取得条件も決めておきます。案件メモで有効期限管理まで行うと、決済直前の手戻りを防ぎやすくなります。
実務の勘所
売買契約の本人確認は、契約担当の後工程ではなく、営業初動で仕込む方が安定します。個人、法人、代理人で必要書類が変わるため、初回対応時点で確認対象を分け、テンプレートを変えて送るだけでも手戻りはかなり減ります。
データと根拠の残し方
残すべき情報は、本人確認書類、登記事項証明書、委任状、実質的支配者確認メモ、取引目的確認メモ、社内レビュー記録です。ファイル名に取得日を付け、契約日変更時に再確認が必要な資料を分かるようにしておくと運用しやすくなります。
不動産テックの使いどころ
電子契約や案件管理ツールを使う場合も、本人確認そのものを自動化できるとは限りません。書類回収、進捗管理、差し戻し記録、契約前レビューを案件単位で見える化する用途で使うと効果が出やすいです。とくに法人案件では、営業、契約担当、管理職が同じ確認状況を見られることが重要です。
よくある詰まりどころ
失敗しやすいのは、担当窓口の名刺だけで法人確認を済ませたつもりになること、委任状の範囲を確認しないこと、必要書類の依頼を契約直前まで遅らせることです。遠隔契約では、郵送往復や押印不備も加わるため、締結希望日から逆算して確認期限を置く必要があります。
社内運用に落とすときのポイント
案件管理に、契約当事者、代理人有無、実質的支配者確認、取引目的確認、本人確認完了日、再確認期限の項目を入れると回しやすくなります。営業が集める情報と契約担当が見る情報を同じ欄に寄せると、二重確認と確認漏れを減らせます。
レビューと改善のタイミング
見直しのタイミングは、媒介受託時、買付受領時、契約日確定時、契約延期時です。差し戻しが出た案件は、何の資料が足りなかったか、どの時点で依頼すべきだったかを振り返り、必要書類テンプレートを更新します。
この業務で役に立ちそうなサービス
参考リンク
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律の解説国土交通省
- 不動産業者向け 犯罪収益移転防止法における取引時確認等のポイント警察庁
- 犯罪収益移転防止法等の一部を改正する法律等に関するQ&A警察庁
- 不動産売買契約の流れ不動産ジャパン
- 不動産売買契約書の作成・レビューにおける留意点BUSINESS LAWYERS
- 不動産売買契約書のポイントTMG法律事務所