活用事例 | 三菱地所レジデンス株式会社
事例サマリー
大手デベロッパーとして売買契約DXツール『Musubell』を導入し、顧客が紙と電子契約を自由に選べる体制を整備。印紙代削減による顧客満足度(NPS)向上や、覚書締結の最短1日化などの成果を上げています。
企業概要
事業概要
総合デベロッパーである三菱地所の住宅事業を担う完全子会社。分譲マンション「ザ・パークハウス」シリーズの開発を中心に、賃貸マンション、一戸建てなどの開発・販売を展開しています。
アセット規模・種類
親会社・三菱地所の連結「住宅事業」セグメントの営業収益は年間3,500億〜4,500億円規模。全国トップクラスのマンション分譲実績を持ちます。
経営課題とDX方針
経営・業務の課題
契約からお引き渡しまでの長期にわたる顧客コミュニケーションの分断、および紙を中心とした売買契約手続きの煩雑さ。
目指す目標
オンライン・オフラインを融合させた顧客体験(OMO)の再構築と、データ一元管理によるバリューチェーン全体の変革。
DX方針・取り組み
「三菱地所デジタルビジョン」に基づき、現場の生産性を最大化させつつ、顧客にとって利便性の高いデジタル契約の選択肢を提供する。
直近5年の財務情報
ツールの導入と財務状況の関連
首都圏を中心とした分譲マンションの価格上昇と堅調な需要に乗り、住宅セグメントの売上高・利益ともに直近で右肩上がりの増収増益を達成しています。2025年末に重要事項説明・契約書作成を支援する「Musubell」を導入。これにより分譲契約におけるペーパーレス化とチェック承認プロセスのクラウド一元化を推進し、従来の郵送事務コストや人為的ミスのやり直しにかかるタイムロスを劇的に削減。大規模かつ高価格帯の物件販売におけるガバナンス体制を強化し、収益性の最大化に寄与しています。
当サイト未掲載の他ツール導入情報
- Front Agent (商談音声AI解析)
- Matterport (3Dバーチャル内覧)
- CITRUS (自社住宅販売管理の基幹システム)
導入ツールと活用事例
Musubell
全国規模の支店や多くの販売現場に新システムを浸透させる必要があり、当初は戸惑いもあったが、ワーキンググループの組成とロールプレイング形式の研修改善によって見事に克服し定着させた。
顧客と会社が折半していた高額な契約印紙代が電子化によりゼロになり、郵送費の削減や事務工数の圧縮効果を合わせると、大規模導入にかかるシステム費用を補って余りある絶大な金銭的メリットがある。
売買契約書だけでなく覚書の締結、顧客への案内プロセスまでをデジタルワークフロー化し、「今誰がどの手続きをしているか」の可視化と時間短縮、ペーパーレス化を全社規模で達成した。
導入前の課題
マンション販売において契約からお引き渡しまでの期間が非常に長く、その間にお客さまとのコミュニケーションが疎遠になりがちという特有の課題を抱えていた。従来の紙を中心とした売買契約手続きでは手続きが非常に煩雑で、対面面談での署名・押印などお客さまの手間や時間的負担が大きく、また双方での印紙代のコスト負担も発生していた。さらに、2022年5月の宅建業法改正(書面の電磁的交付等)を控え、法改正に適合した電子契約の導入体制を構築しつつ、現場スタッフにミスのない運用をどのように浸透させるかが課題となっていた。
選定理由
単なる業務効率化に留まらず、顧客の体験価値(CX)向上を第一に掲げ、「お客さまが紙契約か電子契約かを自ら選べるオプション(選択肢)」として提供できるシステム設計。宅建業法改正(2022年5月)のタイミングに照準を合わせたスピーディーな導入スケジュールと、デジタルガレージ社との強固なパートナーシップ(現場のワーキンググループ組成やサポート体制)。そして、電子契約化に伴う会社側およびお客さま側双方の契約書印紙代削減という極めて明確な金銭的メリットを評価したためである。
実施内容・プロセス
2021年11月より一部の販売現場でトライアルを開始。2022年5月の宅建業法改正に向けて、現場視点でのFAQの作成や業務フロー設計を行うワーキンググループを組成した。従来の紙契約を残しつつ、顧客に電子契約を選択肢として提供する仕組みを構築。現場担当者の早期習得と不慣れによるミスを防ぐため、当初行っていた座学中心のレクチャーから、実際のPC画面を操作するロールプレイング形式の研修へとやり方を転換。さらに、売買契約以降に発生する各種覚書等の書類についてもMusubellを利用した非対面(郵送不要)での締結へと活用範囲を拡張した。
得られた効果
電子契約を利用した顧客のNPS®(顧客ロイヤルティ指標)が、紙契約の顧客と比較して約4%高くなるという明確なCX向上の効果が実証された。顧客の電子契約選択理由は「印紙代が不要」が50%超で最多となり、対面不要な簡便さと併せて非常に高く評価された。売買契約後の覚書等のやり取りも、郵送不要で最短1日で締結できるようになり劇的に時間短縮。ロープレ型研修の効果で現場のミスも解消され、全国の支店に経験者を順次配置することでスムーズな全国展開を達成した。業務フローの見える化により、管理効率も向上した。
当サイトの独自考察とまとめ (Musubell)
本事例は、大手デベロッパーの三菱地所レジデンスが「顧客視点(CX向上)」を最優先に掲げ、宅建業法改正に照準を合わせてMusubellの全社導入を成功させた、不動産業界におけるDXの模範的モデルである。多くの企業が「業務効率化」を第一目的に置く中、同社は「電子契約という新たなCXの選択肢の提供」と定義した。これにより、顧客にとっては印紙代不要や手続きの簡便さという直接的メリットが生じ、結果としてNPSが4%向上するという定性的なブランド価値向上に結びついた。
社内展開においては、本社主導の押し付けを避け、若手現場メンバー主体のワーキンググループによるFAQの作り込みや、座学からロールプレイング形式への研修方法の転換など、現場の「慣れ」を最大化する仕掛けが極めて精緻に設計されている。
地方展開や共同事業(JV)の多い大手デベロッパーにおいて、社内のみならず社外やJVパートナー、顧客をも巻き込んでDXを推進する際の組織マネジメントの教科書と言える事例である。